はじめに:なぜスパイダーガードが必要なのか?
「相手が大きくて力が強い…」「いつもパスガードされて押しつぶされる…」 そんな悩みを抱えていませんか?
もしそうなら、スパイダーガードこそがあなたの救世主になります。これは単なる防御の構えではありません。相手の両腕をコントロールし、まるで操り人形のように動かすための「最強の司令塔」です。
世界王者の黒帯だって、最初はここからスタートしました。道着の袖を掴み、足を相手の腕に突っ張る。たったこれだけの構造が、体重差をひっくり返す魔法になります。
この記事では、明日からの練習ですぐに試せるように、スパイダーガードの仕組みから必殺技、そして黒帯へのロードマップまでを、わかりやすく噛み砕いて解説します。さあ、一緒にマット上の支配者を目指しましょう!
第1章:スパイダーガードの仕組み(なぜ効くの?)
まずは「なぜスパイダーガードが強いのか」をサクッと理解しましょう。理屈がわかれば、技の再現性がグンと上がります。
1.1 相手を「ゾンビ」にする
スパイダーガードの最大の目的は、相手の肘(ひじ)を外側に開かせることです。
人間は、脇が締まっているときに一番力を発揮できます。逆に、肘が身体から離れて腕が伸びきった状態(まるでゾンビのようなポーズ)になると、力が入らず、姿勢(ポスチャー)も保てなくなります。
- 袖を引く手
- 腕を押す足
この2つがセットになって相手の肘を強制的に「パカーン」と開かせる。これができれば、相手はもう強いパスガードができなくなります。
1.2 押すと引くの絶妙なバランス
スパイダーガードは静止画ではありません。常に**「押し」と「引き」のバランス**を保つことが重要です。
- 手(スリーブグリップ): 相手を逃がさないための「碇(いかり)」。4本指で袋を作るようにしっかり握りましょう。
- 足(バイセップスフック): 距離を作るための「突っ張り棒」。足の裏全体ではなく、土踏まずや母指球で相手の二の腕を捉えます。
1.3 距離感は「中距離」がベスト
近すぎず、遠すぎず。相手のパスガードの圧力を足で止めつつ、自分の足が相手の首や腕にすぐ届く**「中距離」**をキープするのがスパイダーガードの定位置です。
第2章:メリットとデメリット
このガードを自分のスタイルに取り入れるべきか? その判断材料を整理しました。
メリット(ここが最高!)
- 鉄壁の防御力 相手の両手を封じてしまうので、そもそもパスガードの準備をさせません。「まずは守りを固めたい」という時に最適です。
- 「柔よく剛を制す」を体現 自分の「脚力」対 相手の「腕力」の戦いに持ち込めます。脚の力は腕の約3〜4倍。小柄な選手や女性が、大男を転がせる理由はここにあります。
- 攻めのバリエーションが豊富 三角絞め、オモプラータ、スイープ。相手の反応に合わせて、ジャンケンのように技を出し続けられます。
デメリット(ここは注意…)
- 指がとにかく痛い 強力なグリップの代償として、指への負担は大きいです。無理に耐えると突き指や腱鞘炎の原因に。
- ノーギ(道着なし)では使いにくい 袖がないと成立しない技なので、ラッシュガードだけの練習では工夫が必要です。
- 足関節を取られるリスク 足を相手の前に差し出す形なので、足首を狙う技(フットロックなど)には注意が必要です。
第3章:どうやって入る?(エントリー方法)
スパーリングでスムーズにスパイダーガードを作るための手順です。
3.1 クローズドガードからの基本ルート
一番安全で、初心者が最初に覚えるべき入り方です。
- 両袖を持つ:まずは相手の両袖をしっかりグリップ。
- エビをする:マットを蹴ってお尻をずらし、少し横を向きます。これで膝を入れるスペースができます。
- 膝を入れる(ニーシールド):空いたスペースに片膝をねじ込みます。最初は足裏を相手の腰に置くと安定します。
- 二の腕へ移動:腰に置いた足を、相手の二の腕(力こぶのあたり)へスライドさせます。
- 完成:もう片方の足も同様にセット。両足で突っ張ればスパイダーガードの完成です!
3.2 相手が立ってきた時(オープンガード)
相手が立ち上がってパスガードに来た時はチャンスです。
- デラヒーバから:デラヒーバガードをしている足を解除し、そのまま相手の二の腕に当てて距離を取ります。
- 緊急脱出として:パスされそうになった時、フレームとして入れていた腕を伸ばして袖を取り、足をねじ込んでリカバリーします。
第4章:攻撃の三本柱「スパイダー・トライアド」
スパイダーガードからの攻撃は、主にこの3つを回していけばOKです。どれか一つを防がれても、次の技が待っています。
4.1 カイトスイープ(凧揚げスイープ)
相手を凧(カイト)のようにふわっと浮かせて返す、スパイダーガードの代表技です。
- セット:片足は腕をピンと伸ばし(テンション)、もう片足は相手の膝裏あたりにフックします(刈り足)。
- 角度:ここが最重要! 相手と正面衝突せず、自分のお尻をずらして90度の角度を作ります。
- ハンドル操作:伸ばした足側の袖を頭の方へ引き上げ、刈る足側の袖はお腹に引き寄せます。
- 発射:相手を頭上に浮かせるように煽りながら、下の足で相手の膝を刈り取ります。そのままマウントへ!
コツ 相手の重心が低くて返せない時は、無理せず次の「三角絞め」に切り替えましょう。
4.2 三角絞め(トライアングルチョーク)
スパイダーガードの形は、実は「三角絞め」のセットアップ完了直前の状態と同じなんです。
- 隙を作る:カイトスイープのプレッシャーをかけると、相手は嫌がって体重を後ろにかけたり、腕を引いたりします。
- 足を飛ばす:二の腕を押していた足を滑らせ、一気に相手の首の後ろへ足を飛ばします(シュート)。
- 腰を上げる:足だけでなく、腰を高く跳ね上げるのがポイント。これで深くロックできます。
4.3 オモプラータ
三角絞めを警戒して相手が頭を上げてきたら、オモプラータの出番です。
- 崩し:片足で強く押して相手のバランスを崩します。
- 回転:もう片方の足を大きく振り上げ、相手の肩の前に回します。
- フィニッシュ:足を組んで相手をうつ伏せにさせます。極まらなくても、起き上がればスイープになります。

【7 Attacks from Spider Guard!】
第5章:さらに進化させる(コンビネーション)
慣れてきたら、他のガードと組み合わせてみましょう。現代柔術のトレンドです。
5.1 スパイダー・ラッソ(最強の盾)
片手は普通のスパイダー、もう片手は相手の腕に足を巻き付ける「ラッソ(投げ縄)」を作ります。 パスガードが強い相手には、この形で一度動きを完全に止めてから攻めるのが鉄則です。
5.2 カラー&スリーブ(首と袖)
片手は袖、片手は襟(カラー)を持ちます。 襟を持つことで相手の頭を下げさせやすくなり、バックを狙ったり、巴投げのようなスイープがやりやすくなります。
第6章:帯色別・習得ロードマップ
焦る必要はありません。帯の色に合わせて、少しずつ課題をクリアしていきましょう。
⚪ 白帯:まずは「キープ」
- 目標:スパイダーガードの形を維持し、簡単につぶされないこと。
- やること:
- グリップが切れたらすぐに持ち直す練習。
- お尻を動かして(エビ)、常に相手と角度を作る練習。
- 攻撃は「カイトスイープ」一本に絞って磨く。
🔵 青帯:技を「つなぐ」
- 目標:相手に二択を迫るコンビネーション。
- やること:
- スイープがダメなら三角絞め、という連携。
- ラッソガードを取り入れて防御力を上げる。
- パスされそうになった時のリカバリー技術。
🟣 紫帯:左右を「支配する」
- 目標:相手の重心をコントロールし、カウンターを合わせる。
- やること:
- 得意な側だけでなく、逆サイドでも同じように攻める。
- 相手がパスガードに来る力を利用して返すカウンター。
- 指を痛めないための、グリップを離すタイミングの熟知。
第7章:うまくいかない時の処方箋(Q&A)
練習で壁にぶつかったら、ここをチェックしてみてください。
| 悩み | 原因かも? | 解決のヒント |
| 足がすぐ外される | 膝がピンと伸びきっている。 | 膝はサスペンションです。少し曲げて「あそび」を持たせ、バネのように使いましょう。 |
| パスされやすい | 背中がマットにべったりついている。 | 常に片方の肩を浮かせ、「半身」になりましょう。動き出しが速くなります。 |
| 指がとにかく痛い | 手の力だけで止めようとしている。 | 主役は「足」です。足で相手を遠ざければ、手にかかる負担は減ります。 |
| スイープできない | 相手と正面向き合っている。 | 必ずお尻をずらして、相手に対して横を向きましょう。お腹の下に空間を作るイメージです。 |
達人のアドバイス 「スパイダーガードは自転車と同じ。止まると倒れる。常に手足を動かしてバランスを取り続けること。そうすれば、相手は重くて何もできなくなる。」
まとめ:マットの上で自由になろう
スパイダーガードは、力のない者が力のある者を制する、まさに柔術の醍醐味が詰まったガードです。
最初は指が痛いし、足も疲れるかもしれません。でも、このガードをマスターすれば、あなたはマットの上で誰よりも自由に動けるようになります。相手をコントロールする楽しさ、ぜひ味わってください。
明日の練習でのミッション: 「まずは両袖を持って、足を二の腕に乗せる!」 これだけでOKです。さあ、道着を持って道場へ行きましょう!



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